第6回地域医療科学教育研究センター重点医療研究部門研究会

演題:血小板の分子生物学 -Life of the blood platelet-
演者:金地泰典(地域医療科学教育研究センター重点医療研究部門助手(分子生命科学講座助手))
日時:平成16年1月10日(火)17:00〜18:00
場所:研究棟4Fカンフェランスルーム2424号室

要旨

 厚生労働省の平成14年の統計によると日本人の死因に占める心疾患、脳血管疾患 の割合は約3割でこれは癌で死亡する人に匹敵する割合となっています。 このような動脈血栓症で重要な役割を担っているのが血小板です。
 血小板は核のない小さな細胞で、その寿命も1週間と短いですが、大きな活性を持っ ています。その一生は骨髄の幹細胞から分化して始まります。前駆細胞は分化の途中 でendomitosisと呼ばれるサイクルに入り核DNA 量が4N, 8N, 16N,32Nと増えて行き、 巨核球と呼ばれる細胞になります。この巨核球の細胞質からちぎれるように血小板が 産生されます。ヒトでは約1兆固の血小板が約1,000m2に及ぶ血管表面の傷害を監視し ていると言われています。
 血管損傷が起きると血管内皮細胞下組織のコラーゲンが露出します。 すると血小板膜上のコラーゲン受容体GPVIやGPIbを介して血小板は内皮下組織に結合 し血小板が活性化されます。活性化血小板からはさらに血小板活性化因子ADPや凝固 活性化因子が放出されると共にインテグリンGPIIb/IIIaが活性型に変換され血小板は 損傷血管部位に強固に固着するようになります。
 今回のセミナーではこのように動脈血栓形成で始めの重要なステップをになうと考 えられる血小板膜蛋白質GPIb/GPVIを中心に、血小板活性化、血栓形成のメカニズム について最近の知見を紹介し、これらに対する抗血小板薬の可能性について述べます。 さらにGPIbの巨核球分化、血小板産生における役割を示し、最近明らかにされたGPIb を介する冷却血小板除去のメカニズムから導かれた冷蔵血小板輸血の可能性について も言及したいと思います。


担当研究室:分子生命科学講座分子医化学分野

 

セミナー一覧に戻る

分子生命科学トップに戻る